長い間、ピアノの音が苦手だった

ここのところ、キーシンのプロコフィエフばかり聴いています。
こんなにも惹きつけられるのはなぜだろう? 自分でもよくわかりません。でも聴かずにはおれない。キーシンに魔法をかけられてしまったのかも。

三姉妹の一番下だった私は、たぶん生まれたときから、(姉たちが練習する)ピアノの音を聴きながら育ちました。私も3歳くらいからピアノのレッスンに通ったようですが、(私が)どうしてもピアノは嫌だと主張し(母親談)、4歳のころには(早っ)やめてしまいました。
上の姉二人とも、音楽の道(ピアノ科)に進みましたので、要するに、私だけはピアノの練習を毎日こなす努力家じゃなかった、ということです。(←多少、屈折)

姉のことを知っている人たちは期待をこめて
「(その環境で育ったあなたは)さぞやピアノがうまいんでしょう?」
「…いえ、私はピアノは弾けないんです。」
そして、気まずい「間」…。
こんな局面が、何度あったことか。 あぁ、またか…。(←かなり、屈折)

毎日のことで慣れていても、例えば試験前などはピアノの音は耳障りでした。
一応、形だけは防音工事が施されているピアノ部屋とは言え、普通の家屋ゆえ、隣の私の部屋には音がもれてくる。ピアノの蓋(というのでしょうか)を閉めてくれればいいのに、たてている(全開している)から、音がうるさくて迷惑! 
すると、きまって姉の反応は「そ れ は、集 中 力 が 無 い だ け」
(図書館に行く、という逃げ道に気がついたのは、ずっとあとからでした。)

そういう、苦々しい思い出もあって、私の脳は「ピアノの音を、音として聴かない」というような刷り込みができたようです。
だからピアノ自体の音を「楽しむ」なんて発想もなかったのかもしれません。
ところが、辻井さんのニュースをきっかけに、ピアノは綺麗な音が出るんだという当たり前のことを、〇〇歳にして初めて気がついたのでした。

そして、ピアノの動画をいろいろ探し、初めてキーシンの演奏を見た(聴いた)とき、それこそ、がつーーんと衝撃を受けました。なんて綺麗な音! そこから、すっかり、虜になってしまった次第。(笑)
少なくとも今「は」ピアノ曲に夢中。  まるで、〇〇年間を取り戻すかのように、ピアノの「音」を聴くことを耳が欲しているのかもしれない、とも思います。