奄美大島(6)

■奄美大島旅行の思い出
私のかすかな記憶で、ぽつんぽつんと覚えている風景の中で、実際今回行ってみて変わっていなかったのは、桟橋の風景。隣にりっぱな大型客船用の桟橋が新しくできていたので、その場所だけひっそりとしていましたが。

幼いころのある日、補助輪付きの自転車(と思う)を家の前で乗るのに飽きてしまった私は、桟橋まで連れて行ってとねだったのでした。
当時、家には働いている人たちが何人かいたのですが、父か誰かが頼んだのか、一番若い見習のおにいさんが私の自転車練習につきあってくれることになりました。(たぶん仕事中だったと思うのに…)

昼間の桟橋は、広々としたコンクリートの広場のようでした。
気持ちよく自転車で行ったり来たりしているうちに、ふっと
「このまま海を飛び越してみたらおもしろいだろうな。」
なんて思った私は、スピードを出したまま桟橋から海へ自転車ごとジャンプしたのでした。
「空を飛べるかも」なんて、一瞬思ったのかもしれません。

引潮だったのと、投げ出されたところが運良くテトラポットのあるところだったこと、着地の際にタイヤがクッションになったことが幸いしたのか、怪我ひとつしませんでした。
でも、慌てたのは、そのお兄さんで、ものすごい勢いで助けに飛び込んできました。
慌てたために足に大きな傷を負って血がたくさん出ていたこと、そして「大変なことをさせてしまった。」と思ったのでしょう、怖い暗いお兄さんの横顔を今でも思い出します。

家につくなり私のせいで怒られたらいけないと
「私が間違って海に落ちたらおにいさんが助けてくれた」「おにいさんが怪我をしながら助けれくれた」と幼いながらまくしたてたのを覚えています。

今回、その「現場」の横を車で通り過ぎた時に両親に「自転車で落ちたこと覚えている?」と聞いたら
「あぁ(ったく、無謀な子だったのよね!というようなニュアンスで)」笑われました。

当時の記憶は、飛んだ!?前後だけが鮮明に残っていて、そのあとはまったく思い出せません。その後、例のおにいさんはどうなったのかと聞いたところ「あの○○(君)だったねえ。たぶん何も(怒られたりは)なかったと思うけど。」とのことで少しほっとしました。

それにしても、こういう「現場」に何十年かぶりに行ってみると、懐かしいのと同時に、ちょっと恥ずかしいやら、少し胸がチクチクしてしまいます。
どうしてあの時海を飛びたいって思ったのかよくわからない。と言いながら実は、少しキモチがわかるような気もする。(いったいどっちなんだ!?:笑)
きっとそのまま魔法使いみたいに飛べると思ったのかもしれません…。